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04
300周年インタビュー・メッセージ
INTERVIEWS &
MESSAGES

写真左から田原俊典校長、林正夫理事長、矢野泉学長、白岩博明校長

VOL.1

〈座談会〉 修道学園の「道」を語る

―後編―

修道学園のこれまでと今、そして未来の「道」について、修道学園 林正夫理事長、広島修道大学 矢野泉学長、修道中学校・修道高等学校 田原俊典校長、広島修道大学ひろしま協創中学校・高等学校 白岩博明校長が、それぞれの視点を交えて語り合いました。

修道学園の今

修道学園の強みと課題

林正夫理事長

林正夫理事長(以下:林)

総合学園である修道学園の強みは、何といっても多くの卒業生が日本のみならず世界中のさまざまな分野で活躍していることでしょう。現在、広島修道大学は7万4,000名、修道高等学校は3万4,000名、ひろしま協創高等学校は3万5,000名の卒業生を送り出しています。地元の経済界はもとより、政治・医学・学術・芸能・スポーツなど幅広い分野において特筆すべき実績を上げ、時代を牽引してきました。たとえば修道中高の同窓会の一つに、約1,000名の会員を擁する修道医会がありますが、医師だけに限ってもこれほどの数の学園出身者がいるということで、大変頼もしく感じます。そして、卒業生の絆が強いことも大きな強みです。社会のあらゆる分野に、「修道」の二文字で結ばれた仲間がいるのは素晴らしいことだと感じています。しかし、これからは「少子化」という問題にどう向き合っていくかが大きな課題ですね。

矢野泉学長(以下:矢野)

本学の魅力の一つは社会とのつながりですが、先程理事長がおっしゃったように、社会のさまざまな分野で本学の卒業生が活躍しています。経済団体の会合や行政の委員会などに出席すると、同席した方々から「修大の卒業生です」とよくお声がけいただくのですが、とても有難く嬉しいことだと感じています。そして、少子化は本当に大変な課題です。少子化の中で多くの大学進学希望者に本学を志望してもらうためには、本学の魅力、教育の魅力をさらにアップさせる必要があります。本学は、中四国エリアでは有力な私立大学としての地位を築いていると自負していますが、今後は全国から学生が集まるような魅力ある大学をめざして、さらなる進化を遂げなければならないと考えています。

田原俊典校長

田原俊典校長(以下:田原)

修道学園の強みは、流行りの言葉にするとブランド力というのでしょうか。「修道ブランド」は理事長をはじめ、先人の方々が築いてこられた非常に大きなパワーのあるものです。実は、少子化と学校のブランド力に関して、先日、ある有名進学校の校長先生とお話しする機会があったのですが、「もう進学実績だけでは、少子化は絶対乗り切れない」とおっしゃったのです。あれほどの進学校が、進学だけのブランド力では足りないのだと。そこで、われわれも新しいブランド力を模索しなければと考え、探究の授業を使って、企業とタッグを組み、生徒がアイデアを出し合って事業を構築する取り組みを検討しているところです。
また、保護者の感覚も昔とは変わってきていると感じます。わが子が有名大学を出て一流企業に入ったり官僚になったりということを、今の保護者はほとんど望んでいないように思います。現代の複雑化した社会で、子どもがどうしたら幸せになれるのか。これに乗れば間違いなしという確実なレールが存在しない時代で、自分のレールは自分で敷かなければならない。自分だけのレールを敷く力を育てる学校が、新たなブランドを獲得していくのだろうと思っています。

白岩博明校長

白岩博明校長(以下:白岩)

本校の強みは、まさに修道ブランド、広島修道大学の附属校ということです。オープンスクールなどで、お父さん、お母さんともに修大出身で、お子さんも修大に進学させたいから協創中高への入学を検討しているという方にお会いすることもあります。修道のブランド力の強さを感じますね。しかしブランドに甘んじてエスカレーター式に進学させるのではなく、学力をしっかり鍛えた生徒を修大に送り出すことを今後の課題として取り組んでいきたいと思っています。
そして、これからの学校は何を強みにしていくべきかと考えた時、田原校長のおっしゃる通りで、私もやはり探究力だと思うのです。本校では先日、高1・2生が全員参加するポスターセッションを行いました。グループごとに作成したポスターを校舎中に展示し、生徒たちが互いに発表し合い、意見を交換し合いました。これは一つの例ですが、こうした試みを重ねながら、生徒の探究マインドを育てていきたいと思っています。

白岩博明校長

修道学園と広島、そして世界

矢野泉学長

矢野

本学では2010(平成22)年から「地域つながるプロジェクト」という取り組みを行っています。これは本学の学生が、地域の方々とともに地域の課題を解決していくものです。今でこそこうした取り組みをする大学は多いですが、本学はその先駆けだったように思います。昨年(2023年)までで、延べ約150のプロジェクトが生まれ、参加学生も1,500名を超えました。ただ、こうした学生主体の活動は、学生たち自身のやりたいことと地域課題を理解することのバランスが崩れてしまうと、地域の方々に迷惑をかけてしまうことになりかねません。しかしプロジェクト発表会で受入先の地域の方から、本学の学生は、地域の視点に立ち、一生懸命に考えて行動してくれたというコメントをいただいています。広島修道大学は地元の就職に強いという評価をいただいていますが、学生がこうした活動を通して実際に地域とつながって頑張っていることが、大学としての強みになっていると感じています。
また本学は、国際交流にも力を入れていまして、毎年200名程度の学生を海外に派遣し、130名程度の留学生を受け入れています。今後も本学の学生をどんどん海外に送り出したいと考え、現在、16の国・地域の35大学と連携協定を締結しています。海外留学と聞くと英語圏への留学をイメージする方が多いと思いますが、本学では韓国、中国、スペイン、フランスなど英語圏以外への留学にも力を入れています。その一つに、チェコのオロモウツ・パラツキー大学との協定があります。広島とチェコのつながりは深いのですが、この地域でチェコに留学できる大学は少なく、学生にとっては貴重な機会となっているのではないかと思います。これからもさまざまな国・地域の大学との連携を広げていきたいですね。

地域つながるプロジェクト(広島修道大学)

国際交流(広島修道大学)

FLP(修道中学校)

田原

世界を視野に入れたプログラムとして、本校では「FLP(フューチャー・リーダーズ・プログラム)」という独自の教育を行っています。これは語学研修ではなく、将来、世界を活動の場とする生徒のためのリーダー研修なのですが、通常のカリキュラムに組み込んで実施しています。中学3年次に2週間、海外から日本の大学に留学している大学院生40人程度とともに、英語漬けのプログラムにチャレンジします。さまざまな形のプログラムを用意しているのですが、何としても英語で話したいという意欲が生徒たちの中に猛然と湧いてくるらしく、自ら必死に勉強するんですよ。それはもう、通常の授業とは比べものにならないほどに(笑)。最後は保護者をお招きして、グループごとに英語でプレゼンテーションを行うのですが、我が子が英語を操って積極的にプレゼンする姿を見て、非常に感銘を受けておられるようです。
また、理想の修道生を「世界貢献」や「人間関係力」など9領域・23テーマで言語化し、中高6年間を通して自己成長を促す「修道ベーシックルーブリック」というプログラムも実施しています。先程のFLPもそうですが、本校では国際理解という枠を超えて、世界でリーダーとなれる力を培う教育を実施しています。

FLP(修道中学校)

GCP(ひろしま協創高等学校)

GCP(ひろしま協創高等学校)

白岩

本校でも一昨年から「GCP(グローバル・コンピテンス・プログラム)」という国際的な能力と資質を育てるプログラムに取り組んでいます。教科を横断・融合した探究ベースの授業をオールイングリッシュで実施するプログラムで、かなり手応えを感じています。そしてグローバルな学びの一方で、ローカル、つまり日本の文化や地域とのつながりを大切にしようということで、たとえば、地域の自治体と協定を結んで災害対応に取り組んだり、本校の園芸部が育てた農作物を使った加工食品を地元の朝市に出品したり、地域とどうつながっていくかについて、いろいろな可能性を探っているところです。
また卒業後の進学先として、台湾の大学に注目しています。既に本校から2名の進学実績があるのですが、今後は国内の大学だけでなく、海外への進学も視野に入れていきたいと考えています。

GCP(ひろしま協創高等学校)

GCP(ひろしま協創高等学校)

修道学園の未来の「道」

今後の展望

修道学園には、現在約8,900人の生徒・学生が在籍していますが、理事長としての目標は、1万人が学ぶ学園にするということです。2022(令和4)年の広島県の15~19歳人口は約12万7,000人ですが、10年後は10%減少の約11万4000人、15年後には3万3,000人減少して約9万4,000人になる見込みです。人口減少は教育界だけの課題ではありませんが、学校経営はことのほか甚大な影響を受けることになります。ただそうした状況においても、修道学園が取るべき道は縮小均衡ではなく、さらなる拡大・成長をめざすべきだと考えています。

矢野

総合文系大学としての広島修道大学は、既に成熟の域に入っていると考えています。本学には人間環境学部や健康科学部といった、文系の枠にとらわれない既設学部もありますが、新学部の開設に向けて議論を進めているところです。同時に長期的なビジョンとして、2040年の広島修道大学のあるべき姿を「挑戦と創造の拠点」と定め、初代学長が掲げておられた「開拓者精神」を引き継ぎながら、地域・社会に求められる人材を送り出す大学であり続けたいと考えています。

田原

本校のビジョンの前に、私学における中等教育の現況についてお話ししたいと思います。現在、全国で公立校が私学化する傾向にあり、6カ年教育を標榜する公立校は今後も増えていくでしょう。公立校も均等な教育機会を提供するだけでなく、スクールポリシーを持って独自色のある教育を行うことは良いと思うのですが、私学と公立校の役割の違いを今一度よく考え、互いに話し合って事を進めていかなければならないと思っています。私学と公立校が我が道を行った結果、私学が立ち行かなくなったということになりかねず、危機感を感じています。本校だけの話ではありませんが、中等教育における私学のプレゼンスをいかに維持し高めていくかが、ビジョンと言えばビジョンでしょうか。

白岩

本校は広島修道大学の附属校として、中高大連携をさらに進化させたいと考えています。生徒たちには日頃から「自立せよ」という話をするのですが、前身が女子校ということもあって、先生方が優しいというか、転ばぬ先の杖を用意してしまうところがあります。中高大連携の中で「上手な放任」を模索しながら、将来に向けて進んでいきたいと思っています。

第31回全国高等学校サッカー選手権大会優勝(修道高等学校)

第31回全国高等学校サッカー選手権大会優勝(修道高等学校)

最後にもう一つ、修道学園として、学業はもちろんですが、スポーツに改めて目を向けてみたいという思いがありますね。かつては修道中高のサッカー班が選手権や国体で優勝したこともありました。

第31回全国高等学校サッカー選手権大会優勝(修道高等学校)

第31回全国高等学校サッカー選手権大会優勝(修道高等学校)

矢野

新しく開業したサッカースタジアム(エディオンピースウイング広島)のミュージアムにも、修道中高のサッカー班が全国優勝した時の写真が展示されていましたよ。本学のサッカー部や野球部も頑張っていますが、そうそう、協創高校も高野連に加盟しましたね。

田原

先日、広陵高校の理事長先生とお会いしたとき、「協創高校の校長が、広陵に勝ちたい、勝つ自信があると言われてましたよ」と伝えておきました(笑)。

白岩

それは勘弁してください(笑)。もちろん、そのくらいの気概を持って頑張っていきますが…。

スポーツはイデオロギーに関係なく、純粋に一生懸命目標に向かって打ち込めますから、そういう経験を若い時代に得てほしいなと思いますね。
少子化という、避けられない大きな課題が待ち構える今、これからの修道学園の道は決して平坦なものではありませんが、手を携えてともに進んでいきましょう。今日はありがとうございました。

2024(令和6)年3月 修道中学校・高等学校にて