元理事長 田中好一氏のこと
広島修道大学本館北側の木立の中に一体の胸像があります。1947年から1978年の31年間、修道学園理事長を務めた田中好一氏(1894年-1981年)の胸像です。
氏は山陽木材防腐㈱(現㈱ザイエンス)を業界のトップ企業に育て上げた有能な経営者であると同時に、戦後広島の復興を語るうえで欠かせない人物でもありました。旧広島市民球場の建設世話人代表や旧広島市公会堂の建設計画、原爆ドームの保存運動への協力など、氏が中心となって行った社会貢献は枚挙にいとまがなく、1974年には広島市名誉市民に選ばれています。
原爆で壊滅的な打撃を受けた修道中学校の関係者は、学園再建のために氏の高潔な人柄と卓越した識見・手腕を見込んで理事長への就任を依頼しました。戦後復興の原点は教育にあると訴える、関係者の熱い説得に応じ、一期4年の約束から31年間の長きにわたり理事長を務め、教育による社会貢献に携わることとなりました。就任直後から、半壊状態の修道中学校の復興計画に取り組み、次々に新校舎を完成させます。その後も新制中学・高校への移行、財団法人から学校法人への変更、修道短期大学・広島商科大学(現広島修道大学)の設置と学部増、沼田キャンパスへの移転などの事業を成功へと導きました。
胸像は氏の学園への貢献をたたえ1960年に修道学園同窓会により建立、1961年に除幕式が行われました。台座の背面には氏の功績と関係者の謝意を記した銘文が刻まれています。戦後の修道学園の礎を築いた氏の胸像は、今も木陰から学園の発展を見守っているかのようです。機会があればぜひご覧になってください。
なお、氏の業績は「広島市名誉市民 田中好一伝 二葉会と廣島」(2022年,冨沢佐一著、㈱ザイエンス発行、広島修道大学図書館所蔵)に詳述されています。今回の記事も一部、本書を参考とさせていただきました。(文中敬称略)